【コラム】これからのインターンシップを考える通信 vol.1
2017年09月26日
本通信では、昨今急増するインターンシップ事情に対し、皆様のお役に立つような様々な事例をご紹介しながら教育・産業・社会のそれぞれの視点からインターンシップの価値や品質を考えていきたいと思っております。
さて、vol.1の今回は、インターンシップの現状の課題に注目したいと思います。
インターンシップの多様化や国の方針
この数年でインターンシップ事情は急激に変化し、様々な動きが加速的に起きています。そのため、インターンシップの多様化や社会情勢の変化に合わせて指針を見直すべく「教育効果の高いインターン」を軸に文部科学省、経済産業省、厚生労働省の三省で議論が重ねられてきました。2014年の三省合意の見直し後は大学・企業等の協力を得ながら、各施策を展開しています。
そんな中、幅広い分野でのインターンシッププログラムが生み出されています。
■国が推進するUIJターン就職等を進めるための「地方創生インターンシップ事業」
■大学や大学のゼミが独自に実施する専門的分野を中心に学べるインターンシップ
■地域の人材コーディネート機関がサポートする長期間の実践的なインターンシップ
さらに、就職を視野においた都市部やIT系企業で増加している有給制のインターンシップや、海外でのビジネスに興味がある学生が参加する海外インターンシップも増えてきています。
また、インターンシップを実施する企業も増加傾向にあります。
しかし、現在はそのような状況の中で課題も多く生まれています。
インターンシップが抱える課題
就職活動時期が前倒しになり採用期間が短縮化されたことや、大手・中小企業ともに人材獲得に力を入れており売り手市場が加速していることなどが要因となり、“採用直結型インターンシップ”が増加しています。最近では、経産省がこのほど“採用直結型インターンシップ”を認める動きをみせたことで、今後もさらに採用型のインターンシップが加速することが予想されます。就職前に、多種多様な企業を知ることはもちろんメリットが多いです。
しかし、このインターンシップには、落とし穴もあります。学生も企業もメリットを感じるような一定の質が保障されないまま急激に増加したため、大学のキャリアセンターではこんな声をよく聞くようになりました。
大手ナビサイトやその他機関など、大学が管轄していないインターンシッププログラムを活用する学生が増え、キャリアセンターだけではインターンシップを実施した学生の全体の把握が難しい。
インターンシップの名のもとに、学生をバイトや単純作業を行うための単なる労働力として利用している企業が存在するなど、インターン生と企業とのマッチングトラブルが増加している。
学生や企業のニーズに応えた多様なプログラムが求められる中、インターンシップに関わる悩みや困り事を相談する場所がなく、さらにプログラムの設計や開発、適切なマッチングをするコーディネート力が求められている。
採用直結型インターンシップ”が増加したことで、本来の教育的効果に重点をおいたインターンシップや低学年向けのインターンシップに力を入れる余力がない。
インターンシップは就業体験であり、「労働」ではありません。そのため、その企業でインターンシップを実施する明確な理由やマインドセット、意図的に設計されたプログラムが必要になります。
そこで現在、国としてもインターンシップの質的・量的な見直しを推進しています。今、現場で問われているのは、インターンシップの教育・産業・社会のそれぞれの価値、品質の担保をどのように保障するのか?といったことではないでしょうか。